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住宅コラム:「換気するんだから気密性なんて意味がない!」って本当!?

2020年9月6日

こんにちは、あおば住建の山崎です。前回は3回にわたり、気密性についてお話をしました。今回は換気についてお話しますが、実は「気密性」と「換気」はただならぬ関係性があるんです。それでは、今回も会話形式で話を進めていきます。それでは始まり始まり。

初音さん:「先日、マイホームセンターに行ってきたんですが、住宅会社の営業の人に気密性について聞いてみたら、「今の住宅は24時間換気が義務付けられているので、気密性にそんなにこだわらなく手も大丈夫ですよ」と言われたんですが本当ですか?」

私:「まさか、その返答で納得されたんですか?」

初音さん:「確かに言われてみれば、住宅は水槽と違って換気の為に給気口や排気口があるんだから、少しぐらい建物に隙間があってもいいような気がします。」

私:「それは、気密性能に自信のない住宅会社の常套句ですよ。もしくは、その担当の方が換気計画について、あまりわかっていないのかもしれません。」

初音さん:「エッ!それじゃぁ、やっぱり「温熱環境のいい家」にするには、気密性の高さも意識していかないとダメなんですね。」

私:「気密性能をUPさせる事はもちろん温熱環境のいい家には必要不可欠なんですが、実はそれだけではなく、換気にとってもイイ事があるんです。と言うよりも気密性能をUPしないと、「計画的に換気をしてもあまり意味がない」と言った方が正しいかもしれません。」

【換気計画の重要性】換気をしないと室内の空気は一体どうなるの?

住宅の様な密閉空間では、「人の呼吸によって排出される二酸化炭素」や「調理などで発生する一酸化炭素」「建材や家具の接着剤から放出されるホルムアルデヒド」など、様々な有害物質によって、刻々と室内の空気汚染が進行しています。

この様な状態をそのまま放っておくと・・・。

・炭酸ガス濃度の上昇による「酸素不足」や「一酸化炭素中毒」

・湿度UPによる「結露の発生」や「カビの増殖」

・様々なニオイが室内にこもる

・「喘息」や「アトピー」などのアレルギー症の発症

・シックハウス症候群の発症

・インフルエンザなどのウイルス感染の可能性UP

等々、いろいろな弊害が生じ、人体への多大な悪影響が考えられます。上記の様な弊害を防ぎ、快適な室内空間を保つためには、「室内の汚れた空気」と「外部の清浄な空気」を入れ替える為の「換気」が欠かせません。

初音さん:「でも、その住宅営業マンさんは、「現在の住宅は24時間換気が義務付けられているので、室内で石油ファンヒーターなどを使わない限り、定期的な換気は必要ないですよ。」とも、言っていたんですが・・・。」

私:「厳密に言うと、24時間換気はシックハウス症候群を防ぐために義務付けられた制度なのですが、一定量の換気が期待できるので、人為的な換気の必要性が少なくなったのは確かですね。しかし、24時間換気だけ行っていれば、「何の心配もない」というわけではありませんよ。」

初音さん:「エッ!そうなんですか。じゃぁ実際に室内で快適に過ごす為には、どのくらいの換気が必要なんですか?」

室内で快適に過ごす為に必要な換気量は?

2003年の建築基準法の改定により、24時間換気が義務付けられたのですが、それに合わせて1時間に必要な換気量についても「0.5回/h」と定められました。

これは、「住宅の居室にある空気を1時間で半分入れ替える」という意味を表しております。※非居室(廊下・トイレ・洗面所等)が換気経路になる際には、居室とみなして扱う必要があります。

「例題」 延床面積100㎡(約30坪) 天井の高さ2.5mとした時、必要となる換気量は?

A 広さ100㎡×天井高2.5m×換気量0.5(回)×1時間=1時間毎の必要換気量125(㎥)となりますので、この場合、最低でも1時間毎に125(㎥)以上の空気を入れ替える能力のある換気システムを設置する事が必要となってきます。

初音さん:「あの~。125(㎥)と言われても全然ピンと来ないんですけど、125(㎥)以上空気が入れ替われば快適に過ごす事が出来るという事ですか?」

私:「おっ!いいところに気付きましたね。実際に快適に過ごす為には、必要換気量は「滞在人数」や「過ごし方」によって変わってきます。一般的な例を紹介しますね。」

人が室内で平常に過ごしている際に必要な換気量は、「成人一人当たり30㎥/h(炭酸ガス濃度を基準とした場合)」と言われます。※喫煙者がいる場合は、40~50㎥/h(浮遊粉塵が増加する為)つまり、先程の例の場合、1時間毎に必要な最低換気量が125㎥でしたので、1時間毎の必要換気量125㎥÷成人1人あたりに必要な換気量30(㎥/h)≒4.16(人)となります。つまり、この広さの住宅の場合は、平常状態で過ごす成人が4人までなら、快適に過ごせるという事になります。

初音さん:「なるほど!そう考えればイイんだ。じゃぁ、24時間換気の能力以上に換気が必要な時は、定期的に換気量を増やせばいいのね。」

私:「そういう事になります。建物の確認申請時には換気計算も義務付けられていますので、普通の住宅会社なら、「換気量不足」「換気量過多」の24時間換気システムを取り付ける事はないと思います。しかしながら、「燃焼系機器の使用」や「調理」等に影響されて、室内の空気の状態が変化するという事も忘れないでくださいね。」

私:「ここで注意して頂きたいのは、今お話した事は、「24時間換気が計画通りに正しく行われている場合」に限っての話なんです。

初音さん:「エッ!24時間換気にさえ気を付けておけばいいんじゃないんですか。」

私:「最初の頃に、「気密性能をUPしないと、『計画的に換気をしても、あまり意味がない』と言った方が正しいかもしれません。」とお話をしたのを覚えてますか?実はそうお伝えした本当の意味はココにあるんです。」

切っても切れない「気密性能」と「換気」の関係性とは?

換気を行う目的は、「入口(給気口)から清浄な空気を流入させ、「出口(排気口)」から汚れた空気を排出し、「室内全体の空気を正常に保つこと」です。しかし、上図の様に、建物の隙間があり過ぎては、「計画的に室内全体の空気を正常に保つ事」ができません。

もう少し分かりやすく言うと、一般的な換気計算は、建物の隙間からの空気の「流入」「流出」を考慮せず、つまり完全な密閉状態での空気の流れを想定して換気計画を行っているので、上図の右側の様に、建物が隙間だらけでは、換気計画で予定していた通りに空気が流れないので、「室内全体の空気を正常に保つ事」ができないんです。

初音さん:「それじゃぁ、気密性が低い建物だったら、24時間換気をする意味がないじゃないですか。「換気計画の給気口」と「建物の隙間」って全然違いますよね。」

私:「その通り、計画的な換気を行う為に「給気口」は不可欠ですが、「建物の隙間」は計画的な換気の邪魔をしてしまいます。なので、隙間の多い建物は、本当の意味で、「温熱環境の良い家」とはいえず、「快適からほど遠い家」になってしまうんです。」

初音さん:「それじゃぁ、住宅営業マンが言ってた「今の住宅は24時間換気の給気口があるので、気密性能をUPしてもあまり意味がない。」って説明は一体何だったんですか!むしろ住宅営業マンの説明と全く逆じゃないですか。計画的な換気をする為には気密性能のUPが欠かせないという事ですよね。」

私:「まぁそう怒らないでください。今回対応してくれた住宅営業マンは、自社の気密性能が低い事を誤魔化したかったのか、気密の事や換気計画について理解していなかったのかは分かりませんが、何度も繰り返しになってしまいますが、室内で快適に過ごす為の必要条件として「清浄な空気の入り口(給気口)」は不可欠でも、「建物の隙間」は不要という事、というより不要だけなら未だしも、「建物の隙間」は計画的な換気の邪魔をしてしまうんです。」

初音さん:「たかが換気と甘く見てはいけないんですね。ちゃんと理解しておかないと大変な事になるんですね。」

私:「その通りです。これからも家づくりの疑問にはドンドンお答えしていきますので、少しづつ一緒に学んでいきましょう。」

今回はここまでになります。次回も楽しみにしてて下さい。

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